ハジカサーにならずにチャレンジ!
そう話すのは沖縄出身の女優として活動する比嘉梨乃さん(沖縄市出身)です。
アイドルへの憧れをきっかけとして目指した芸能界、沖縄を「補給」しながら東京へ馴染んでいった日々、女優としてのやりがい、そして沖縄の若者へ伝える「恥ずかしがらずにチャレンジ!」の真意とは。
インタビューにてお話を伺いました。
(インタビュー:2022年12月)
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アイドルに憧れて芸能界を志す
ー高校生の時に東京の事務所に所属されていたとのことですが、芸能活動は順風満帆にスタートされたんですか?
それが全然です。いろいろなオーディションを受けていいところまでは行っていたんですが最後の壁が越えられなくて。悔しい思いもたくさんありましたね。
芸能界を意識したのは小学生ぐらいのときで、漠然とアイドルになりたいなと思っていましたね。歌番組を見るのが好きで、当時モーニング娘。さんの全盛期で憧れていました。
小学5年生の時に初めてホリプロスカウトキャラバンが沖縄で開催されると知ってそれを受けたのが始まりです。
その時はすぐ落ちたんですけど2回目、6年生の時に再チャレンジしたら九州、沖縄代表までなって九州ブロックみたいなとこまで行って。ただ本選には進めませんでした。
その後も中学生の時に三ツ矢サイダーのオーディションがあったんです。それは最終10人まで残ってこの10人はテレビでも取り上げられたんですよ。けど結果はだめでした。
その時に一度芸能界を目指すのは諦めました。芸能の仕事をやりたいって思っていましたが、いつも最後とかで落ちるし「もういいかな」って思ってしまいました。
当時中3で高校受験があったので、それも良い区切りになっていましたね。高校に入ってからは友達と遊ぶのが楽しくて、オーディションも受けなくなりました。
ーそこから一転して芸能界に進むきっかけがあったんですね
『沖縄美少女図鑑』っていう雑誌を見つけてそれに応募したのがきっかけですね。
たまたま同級生が載っていて、私も最後にこれに載れたら芸能への夢は諦められるなという軽い気持ちで応募したんです。そしたらその雑誌の編集長がたまたま私のことを知ってくれていたんです。
応募する数か月前にあった沖縄全島エイサーまつりで私が踊っていて、その時に取材してくれた方でした。「探していたんだよ」って声をかけてくれたときは嬉しかったですね。
そのまま表紙で使っていただいて「思い出も作れたし芸能の夢はもういいや」と思っていたんですが、そこから道が開けました。
次の号にも出させてもらったり、当時、『美少女図鑑』がウィルコム沖縄と組んでいて、その流れでウィルコム沖縄のイメージガールをさせていただきCMにも出させていただきました。
そのCMが評判が良くて話題になり、東京の芸能事務所の目に止まって所属が決まりました。
沖縄で元気を補給しながらの東京生活
ー上京のきっかけを教えてください。
高校3年生の時からお仕事で東京に通っていたんです。当時レギュラー番組があって東京の事務所に所属していたので、卒業後に上京するのは自然な流れでした。
たまたま父が単身赴任で東京にいて兄も大学進学で東京にいたんです。なので私が上京するタイミングで母と妹もついてきてくれて、家族全員で東京に住むことになりました。
それから3年間は家族で東京生活を送っていました。いろいろと支えてもらいましたね。
ー東京の事務所に所属して、家族そろって東京生活が始まったんですね。東京生活はすぐに慣れましたか?
それが慣れるまでかなり時間がかかりました。上京してからも2年間は毎月沖縄に帰っていました。家族はいますが友達が全くいない環境は当時つらかったですね。
あと東京のゴミゴミした感じに慣れなくて、どうしても沖縄の空気を吸いたいという思いが強くて。充電しに毎月沖縄に帰っていて2年間毎月帰ることでようやく落ち着きました。
沖縄から東京に戻ってくると人が変わったように元気になっていたようで、事務所のマネージャーも「こんなに元気になるなら、帰って充電しておいで」って送り出してくれていましたね。
ー沖縄で充電することで東京で頑張れたんですね。
私の周りでも頑張りすぎちゃって気持ちが折れて完全に沖縄に帰っちゃう人たちも結構いました。
私は定期的に沖縄で充電することで乗り越えられたという感じですね。
女優として感じた「生きてる実感」
※比嘉梨乃 主演短編映画『トシエ・ザ・ニヒリスト』(2021年)
ー夢の芸能活動を東京で始めたときのお気持ちを聞かせてください。
そこからがまた大変でしたね。上京当初はレギュラーの生放送番組にも出させていただいていたんですが、それだけでは生計を立てられなくて、アルバイトをしながら芸能活動を続けていました。
東京に出て事務所に所属していれば仕事が決まるわけでもなくて、伸び悩んでいる時期が結構ありました。
23歳くらいで辞めようかと考えていましたね。仕事が嫌になり、家を出るとき母に「今日辞めると伝えてくる」と言って家を出ました。
マネージャーとの打ち合わせで、こちらから辞めると伝えるより前に向こうから封筒を出してきて、「これ比嘉さんに決まったから」とヒロイン役で受けたオーディションに合格した事を報告されました。
さっきまで辞める気満々だったのに、なんか嬉しくなっちゃって(笑)。「あ、まだやりたい気持ちが残っているんだな」ってその時思いました。
こういうことが何度かありましたね。「もう辞めよう」って思った矢先に仕事が決まって、そのたびに辞めるタイミングを伸ばしていたんですが、逆に今は辞めたいという気持ちが無くなりましたね。
最近は映画のお仕事が一番多くて、お芝居が楽しいなって思うようになりましたね。
小林啓一監督の『ぼんとリンちゃん』という作品に出たとき、20分ぐらいある喧嘩のシーンをワンカット長回しでやったんですよ。今でこそ長回しのシーンって多いですけど、当時あんまりなくてすごく新鮮でした。
映像でもこんな撮り方あるんだっていう驚きもあって、 なんだか「生きてるな」って思えたんですよ。
この役を通じてお芝居ってこんなに楽しいんだなって思えて、そこから女優として役者としてやりたいという気持ちが強くなりました。
それまでは「ヒガリノ」として活動していたのを本名の「比嘉梨乃」にして、そこからリスタートって感じでした。
その作品が監督協会で新人賞を受賞してかなり注目を集めたのがまたターニングポイントになりました。賞を取ったことで業界の人に認知されてオーディションのプロフィール欄を見て反応してくれる方が増えました。それがすごく嬉しかったです。
世間的にあまり知られていない作品でも、業界の人が見てくれる作品に出ることで次の仕事に繋がりやすいと実感して、いろいろな監督のワークショップに参加するようになりました。
そこからワークショップオーディションみたいな感じで出演を勝ち取ったものもいくつかあります。
ー今年は沖縄復帰50年と節目の年でしたが、それに関わるお仕事もありましたか?
私もいくつか出演させて頂きましたが、出演作以外にも今年(2022年)は沖縄を題材にした多くの映画がありました。
沖縄出身として、今後もより多くの沖縄の作品と関わっていけるようにこれからも頑張っていきたいです。
「ハジカサー」を乗り越えよう!
ー芸能活動をしたいと思っている沖縄の若い子たちに向けてメッセージをお願いします。
とにかくチャレンジしてほしいですね。
沖縄で開催されていたウィルコム沖縄のオーディションに関わらせて頂いた事もあるのですが、沖縄の子って「ハジカサー(恥ずかしがり屋)」が多いんです。
やりたい気持ちがあっても自分では応募できない、周りの人が応募してくれてもいざオーディションになると恥ずかしくて来れない子も結構いました。それだとスタートラインには立てないですよね。
私の時代と違って今は沖縄県で開催されるオーディションも増えたので、自分の現在地を知るためにもどんどん受けたほうが良い。
一次で落ちることもあれば、最終まで行くこともある。どこまで行けるか知ることが自信ややる気に繋がります。
ー東京で活動する良い点・悪い点はありますか?
役者的観点でいうと映画館や舞台が多くて触れたいものに触れられるという点ですね。
沖縄だと「この映画見たいけど上映しないな」とか結構あるので、情報が全部手に届くというところは東京ならではだと思います。あと、競争も激しいのでその分成長を感じる機会も多いですね。
悪い点は余裕のなさを感じることですかね。
良くも悪くも東京に何かを求めてきてる人がほととじゃないですか。夢を追ってとか、みんな結構自分自分っていうか、自分で生きることに精一杯というか。
沖縄でおばあちゃんとかと喋る感じ、のんびりした感じが無性に恋しくなります。
ーこれから上京を考えている沖縄の若者にメッセージをお願いします。
ウチナーンチュは東京ですごく愛されると思います。沖縄出身だと興味を持ってもらえて、ポジティブに受け入れてくれる。
沖縄が大好きなヤマトンチュはたくさんいます。だからやりたいことがあるなら臆さずに飛び込んできてほしいですね。
東京で挑戦して「やっぱり沖縄だな」って思えば沖縄に帰ればいいだけの話ですし、いつでも帰れますからね。
あと一人で寂しくなったら沖縄料理屋に行けば店員さんやお客さんで絶対沖縄出身者がいるので、そこで新しいコミュニティも出来ますし、情報もいろいろと入ってきます。
比嘉梨乃さんの最近の活動
沖縄銀行「おきぎんSmart」
沖縄ダイケン50周年記念TVCM
・3月19日配信スタートWOWOW連続ドラマW「フェンス」出演
https://www.wowow.co.jp/drama/original/fence/
・某大手保険会社TVCM(公開前)
・沖縄を舞台にしたドラマメイン出演(2023年公開予定)
比嘉梨乃(ひが・りの)
2009年WILLCOM沖縄のイメージガールとしてデビューして以降、女優としても数多くの作品に出演をし、近年では沖縄での広告や映画に主演。また、主演を務めた短編映画「トシエ・ザ・ニヒリスト」が、アカデミー賞認定の短編映画祭「LA Shorts International Film Festival」で、2021年7月にプレミア上映。以降、Pari Art and Movie Awardsにて、最優秀女優賞ノミネート。他映画祭において、主演女優賞など受賞。
【Instagram】https://www.instagram.com/__higarino__/