インタビュー

易きに流れずチャレンジを-前西原清城さんインタビュー(社会保険労務士・行政書士事務所Officeうりずん)

 

易きに流れず、チャレンジを。

そう語るのは、社会保険労務士・行政書士事務所「Officeうりずん」の前西原清城さん(那覇市出身)。

つてを頼っての上京、母の言葉「手に職をつけなさい」が突き動かした社労士への道、そして「先輩からの恩を後輩に返したい」という思いにいたるまでを語っていただきました。

(インタビュー日:2023年9月)

 

<ご案内>

 

母の言葉「手に職をつけなさい」で社労士を目指す

 

ー自己紹介と現在のお仕事について教えてください。

生まれが沖縄県那覇市壺屋で小学校の途中で転校して識名で育ちました。1965年生まれの今年58歳で、54歳の時に士業として独立開業しました。

現在は「Officeうりずん」という事務所の代表をしています。社会保険労務士・行政書士事務所で、私は社会保険労務士としての業務がメインになります。

 

 

【公式ホームページ】
Officeうりずん 社会保険労務士・行政書士事務所

 

ーこれまでの経歴と社労士をめざしたきっかけについて教えてください。

独立開業する前は運送業に従事していました。若い時はドライバーをしていて長距離便も含めて全国諸々行っていたのですが、年齢を重ねてくると体力的にも大変なので、事務方に回って配車や整備管理、運航管理の業務を行うようになりました。

ただ当時の私は「もっと条件の良い仕事があるんじゃないか。自分の居場所は他にあるんじゃないか」と悩んでいる時期でもありました。

ずっと誰かに雇用されているというのが何となく自分にそぐわないという思いをいつも持っていました。そんな中で手に職を持ちたいという気持ちが強かったですね。

これは母の影響です。私は幼少期母子家庭で(10歳の時に母親が再婚しましたが)母は女手一つで私を育てるため、親戚に借金をしてクリーニング屋を始めました。

女手一つで商売しておりますので、大きな商いは出来ませんでしたが、日銭が入ります。お店の立地も良かったので何とか親子二人が生活出来る位の売上はあったようで、ありがたいとことに生活に困ることはありませんでした。

母から「貴方も大人になったら手に職をつけなさい」と口癖のように幼い私に話していたのを覚えております。そんな母を見て育ったので、手に職を持つことが自分達の生活を守ることに繋がることを幼い時から身をもって感じていたと思います。

でも、手に職といっても何をどうしたらいいのかも分からず、キッカケがなかった私はくすぶっていました。

そんな30代前半、妻の義理の兄が社会保険労務士を取得したと聞きました。その時に、「あ!これだ!!独立開業できる資格だ!」と思い立って資格取得を目指しました。

もともと勉強が得意なわけではないので、資格取得まではかなり苦労もありました。5回落ちて、6回目でやっと合格し、気づいたら40歳を超えていましたがやり続けることでつかみ取れました。

 

ー資格取得から独立までの経緯を教えてください。

当時勤務していた運送会社の仕事も楽しくて、給料もそれなりに貰えていたので開業するまでには至りませんでした。

最終的には専務を任せてもらい経営に携わるようになりました。会社は創業から60年くらい続いているところでしたが、後継者がいなくて最終的にM&Aで売却されることになり、そのタイミングで私も退任しました。

その時が50歳くらいで、人生の大きな転機となりました。前職のつながりで同業他社から厚遇でのお誘いもありましたが、定年の無い仕事で自分のやりたいことをやろうと決意して独立しました。

 

縁を頼っての上京

 

ー上京のきっかけを教えてください。

大学進学で上京しました。もともとは高校卒業したらすぐに就職するつもりでした。卒業後に就職しやすそうということで進路も沖縄工業高等学校を選んでいます。

ただ今だから言えますけど、当時の沖縄工業はとんでもないところでした(笑)。入学式終わって教室行ったら、たばこ吸ってるやつがいたり喧嘩が日常茶飯事だったりと、ヤンチャなところでした。

必然的に学力も低くて、その中で私は上位の成績にいました。それで推薦で大学進学できるということになり進学することにしました。

母からの後押しが強かったですね。大学に行けるなら進学してその後安定した仕事に就いてほしいという親心だったと思います。

その中で東京を選んだのは、進学先の工学院大学に1つ上の先輩が進学していたんです。高校の先生も「何かあったら頼りなさい」と言って紹介してくれて。何かあったときに相談できる相手がいたのは大きかったですね。

県外に出るうえで、こういう縁は大事ですね。単身で乗り込みにはハードルが高いですからね。

 

ー東京での生活はどうでしたか?

ホームシックになる余裕もないほど忙しい毎日でしたね。昼間は働いて、仕事が終わってから夜間の大学に通っていたんです。

学校が終わって帰宅するのが早くても22時半ぐらいで、翌日は朝7時ぐらいに起きてすぐ仕事場に行くような日々でした。

当時は土曜日も普通に仕事でしたから休みは日曜日だけ。休みの日はぐったりして寝るだけで、 そんな状況がずっと4年間も続いていましたね。

ただ、人には恵まれて良くしてもらいましたね。大学が夜間だったこともあり、学食にいくとだいたい余っているんですよ。それで毎回学食のおばちゃんが大盛にしてくれるんです。「どうせ余るから、いっぱい食べていきなさい」と。

東京でもカメーカメー攻撃を受けたおかげで上京当時60キロだった体重は100キロ超えるまでに成長しました(笑)。

ただ、働きながらの大学生活をやり遂げることが出来ずに4年生のときに中退したんです。母が苦労してお金を用意して大学に行かせてくれたのに、それが申し訳なくて辞めたことを15年くらい母に言えずにいたんですが、母は大学から通知が来て知っていたようです。

ただ、私には何も言ってきませんでした。

私もしっかり仕事をして稼げるようになるまでは沖縄に帰らないと心に決めて仕事に打ち込みました。15年ぶりに沖縄に帰って母に事実を告げた際も「今ちゃんと仕事をしているならいいさ」って感じでしたね。

 

先輩からの恩を下の世代に返したい

 

ー今後の目標について教えてください。

現在の営業拠点は神奈川ですが、沖縄でも顧問先の開拓を進めています。顧問先が20社程になったら沖縄営業所を設立したいですね。社労士の仕事を通して沖縄に恩返しをしたいと考えています。

東京で生活していて、同郷の先輩たちに色々とかわいがってもらいました。

私は働きながら大学に通っていて、そのバイト先に沖縄出身の方たちが数名いたんです。同じ沖縄出身の18歳がメッキ工場で働きながら大学に通っているということで、沖縄出身の先輩たちから可愛がってもらって、休みの日はよくご飯にも連れて行ってもらいました。

先輩たちにお礼を言った際に「大学行っているんだから偉くなって、内地に出てくる後輩たちの面倒を見てあげなさい」って言うんですよ。

独立して沖縄のために何か役に立ちたいと思う原動力は先輩たちから受けた恩を下の世代につなぐことですね。

出来る立場になった時に先輩たちはもう他界されていたので、返す術がない。だったら先輩たちが言っていたように下の世代のためにやろうという思いですね。

 

ー上京を考えている沖縄の子たちに向けてメッセージをお願いします。

人間は易きに流れがちですから、あえて難しいほうにチャレンジしてほしいですね。まして10代・20代はいろんな可能性があるんで、やりたいことにどんどんチャレンジしてほしいです。

やりたいことが見つからない場合、一度上京して外から沖縄を見てほしいですね。沖縄の良さや親のありがたみなど、親元離れて厳しい環境に身を置いて初めて気づくことがたくさんあります。

沖縄の親は良くも悪くも甘やかしすぎるところがあります。親戚含めて優しいので、若い時は厳しい環境にあえて身を置いて揉まれてほしいですね。

私たちが生きているのは競争社会なので、厳しい現実に直面して、それを乗り越えれる力強さを得てほしいですね。

最近あった嬉しいエピソードがあります。沖縄出身で八王子の大学に通っている子が「社労士に興味がある」といって訪ねてきたんです。沖縄出身というだけでうれしくて色々とレクチャーしました。

行動力のある子を応援したい沖縄出身の経営者は多いので、どんどん飛び込んできてほしいですね。

 

前西原清城(まえにしはら・せいじょう)

沖縄県那覇市出身、Officeうりずん社会保険労務士行政書士事務所 代表。沖縄工業高校卒業後、工学院大学に進学するも中退。建設会社、運送会社、電気通信会社など様々な仕事に従事したのち36歳から社労士を目指して受験を開始して41歳で取得。運送会社の専務を経て54歳時に社労士として現事務所を開業。

【公式ホームページ】
社会保険労務士・行政書士事務所「Officeうりずん」

 

平良英之

前西原さん、お話ありがとうございました!

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