インタビュー

「直に触れ合う繋がりが人生を豊かにします」新垣進さんの仕事論(関東沖縄経営者協会9代目会長)

新垣進さん

 

「face to faceが人生を豊かにします」

 

そう語るのは、関東沖縄経営者協会9代目会長、(株)オールビジネスリンク代表の新垣進さんです(八重瀬町出身)。

沖縄差別を体験して育った幼少期、ハングリー精神で起業して「人を大事にする」人材紹介業を手掛けるまで、また愛してやまない沖縄への思いなどを教えていただきました。

 

<ご案内>

 

「沖縄差別」を肌で感じた幼少期

 

ーまず生い立ちについて教えていただけますか

私は1954年、東風平町(現在の八重瀬町)で生まれました。

ただ生後3ヶ月で神奈川県川崎市に移住したので、沖縄での記憶はありません。

当時からこの地域には沖縄出身者が多く、周囲の13世帯がみんな沖縄。近所では色黒のウチナンチュが方言を喋っているけど、公園に行けば色白で標準語の子供たちがいる。そんな環境でした。

まだ本土復帰前で沖縄がよく知られてなかったこともあり、沖縄差別の雰囲気を肌で感じていました。

小学校の自己紹介で「沖縄出身です」と言ったら「えー、新垣くんアメリカ人なんだ」とざわざわっとしてね。

僕はアメリカ人って意識ないんだけど。でも先生も否定しないんですよ。おふくろに聞いてもちゃんと答えてくれないし。

僕は人気者だったから差別なんて受けなかったけどね。ただ中学校時代、差別されてる女の子がいたんだよね。

男同士ならかばうんだけど思春期の異性でしょ?そんなこともできなくて。

そこで僕は中学3年の卒業文集に「差別」ってテーマで書きました。差別はいけないと。真剣に書いたんだよね。普段は卓球部のキャプテンでちゃらちゃらやってたんだけど。

そしたら理科の先生と社会の女性の先生に呼ばれてね、「新垣くん、勉強になったよ。そうだよね」と。

でも男性の国語教師からは授業中に「新垣、立てー!」と突然言われて。1時間罵倒。「何が差別なんだお前は!」と。

僕は父親にも1回も怒られたことないんでびっくりしました。1時間、逃げ場ないくらい怒られて。

そして職員会議で問題になってね。生徒会長からは「これ変えたほうがいいんじゃない?」と言われて。僕は「いいよ」と答えて。

でもみんな真面目に書いてるその場で僕は一枚の紙にね、その眼鏡の国語教師の似顔絵を描いて(笑)。

 

新垣進さん
新垣進さん
そして「僕はこんな大人にはなりたくない」とも書いた。

 

あの時は急に言われたんで黙って聞いていたんだけど、今度は僕がケンカを売るようにね。これやったらまた必ず怒ってくるだろうと思って待ってた。

卒業までに5回くらい国語の授業があって、先生が言ってきたら反論してやろうと思って。でもなぜか何も言われなくて。

そういう風に「沖縄差別」を肌で感じながら育ちました。

ただ後ほど述べますが、こうした体験は現在の事業のひとつである外国人の人材紹介事業に取り組む上で良い影響として生かせてると思います。

 

ハングリー精神から経営者の道へ

 

ー経営者はいつ頃から志すようになりましたか?

当時の沖縄出身者は貧しい家庭が多くてね。僕は6人兄弟の一番下で同じく貧しかった。

習い事の月謝は払えないし何もできない。子供なりにふがいない思いをしてた。

でもたまたま親戚のおじさんがね、事業で成功していたんです。

それを見て子供なりに「自分も将来社長になって裕福になりたい」とハングリー精神が磨かれた。サラリーマンなんて考えなかった。

当時すでにおふくろが食料品店をやってたんですよ。それを「僕のアイディアで好きなようにやらせてくれないか」と言ったら「いいわよ」と快く受けてくれて。

そこで飲食店と食料品店を並立するようなお店にしました。

インドカレーを扱って漫画チックな写真を置いたり、知り合いに「味の素」に勤める人がいたのでお店のデザインを依頼して、陳列の仕方、ポップの書き方を教わって。

当時まだコンビニはありませんでしたが、それに近いビジネスモデルでしたね。そしたらこれが大当たり。

お客さんが1日350人くらいだったのが、一気に1000人以上に増えました。一気に金回りが良くなって。

ちょうどその頃、派遣業に関する法律ができる手前くらいの段階でした。

僕はもともと営業好きで人を紹介するのは学生時代からうまかったし「これからは派遣の時代だ」と思い人材派遣業を立ち上げました。

平成二年あたりから10年間で年商17億くらいの会社に育て上げました。私が30歳~40歳くらいの頃です。派遣業界では独立系で第3位くらいのポジションにいました。

そのまま行ってれば会社はもっと大きくなれたと思うのだけど、たまたまその頃、とある借金の保証人になって騙されちゃってね。1億以上の負債を抱えて倒産しちゃいました。

それでも5年で復活するストーリーを作ってね、46歳で今の会社を立ち上げて。朝の8時から夜の12時半まで働き詰め。

特に倒産してから2年間は休んだのは正月3日と大晦日くらい。自分でもびっくりするくらい仕事してました。

前の会社は10年で育てたけど、今の会社を同じくらいの業績にするまで今度は倍かかりました。時代も難しくなってきたのでね。

今、社員20名くらいいますけど手堅くコツコツとやっています。「主婦に特化した派遣会社」ということで。主婦派遣業界第3位です。

 

主婦のミカタ(株式会社オールビジネスリンク)

 

そんな感じで手堅くやってきて、去年あたりから外国人ビジネスにも取り組み始めています。去年の5月からスタートして軌道に乗せるべく動いてます。

ーなぜ主婦の方をメインとした人材派遣事業をしようと思われたのですか?

今、日本の少子高齢化がどんどん進んでますよね。総人口の約45%が65歳以上なんですよ。

そんななか働き手の減少を補うのは主婦だ、シニアだ、外国人だと。

最近は共働き世帯も増えてきましたよね。ワークシェアリングという言葉も出てきた。人がいないから中小起業は伸び悩んでいる。

そうしたご時世に合わせて、いろんな働き方を提案しています。

主婦は優秀な方が多いんですよね。結婚・子育てをしているのでしっかり者。独身時代にハイキャリアだった方もいる。子育て、家事、仕事のマルチタスクも上手にこなせる。

最近増えてきたのがWEB関係です。WEBの仕事や打ち合わせは家でもできる。在宅派遣も増えてますがサボらずしっかり仕事をこなしてくれる。

主婦の方のそうした安定感のある仕事ぶりが当社の強みのひとつです。

 

自らの体験を生かし「人を大事にする」外国人紹介業を

ー今、力を入れてる外国人の人材紹介ビジネスについて教えていただけますか。

最初の会社では派遣業界で最初の上場企業を作ろうと思ってたし、周りにもそう見られてた。でも足をすくわれたでしょ?今後の外国人ビジネスは当時のようなロマンを感じます。

ベトナム、ネパール、ミャンマー。話すとみんな面白い。また「沖縄」っていうとみんな目が輝くんですよ。沖縄文化や地理的な近さで彼らには親近感を持たれてます。

外国人を使ってる今の業者は差別なんてあまり縁がなく育ってますよね。

 

新垣進さん
新垣進さん
でも僕は幼少期から差別問題を経験してるから、その大事さがわかる。

 

ネパールやベトナムは格下に見られがちだけど、接してみると頭が良くてポジティブ。日本語もうまい。

ニュースなんかだと雇う側のハラスメントや外国人側の問題行動などが目立ちやすいけど、良い会社も多いんですよ。家族のようにバーベキューしたりね。

そういう会社が増えるよう、受け入れ先の教育もしっかりやりたい。

日本はこれから国際化をうまくやっていかないと経済的にだめでしょうね。

今後は外国人ビジネスもハートを持って取り組んでね、「自分の国から日本に来て良かったな」と思われるように応援してあげたい。

私は「うちなんちゅ」というだけで親戚のような親しみを感じますが、日本に来る外国人にも同じような気持ちがあります。

 

新垣進さん
新垣進さん
かつて沖縄差別を体験してきたからこそでしょうね。

 

外国人が日本で働くには制度的にまだまだ不十分です。差別的な扱いも時々見られる。

若い人が異国の地で孤独を抱えながらつらい扱いを受けたら、当然問題行動に走りやすい。

当社は何かあった時はまず外国人の味方でありたい。仕事内容が悪いところには紹介せず、良い会社との取引を心がけています。

 

関東沖縄経営者協会とは

 

ー関東沖縄経営者協会について教えていただけますか。

基本的には沖縄出身の社長の集まりです。若い経営者でまだ力が足りない人や参謀的な立場の方は準会員、本土出身だけど沖縄の人とつながりたい方は賛助会員として受け入れてます。現在は160社ほどご加入いただいてます。

主なメリットはビジネスマッチングや情報交換。食事会、ゴルフコンペ。経営セミナーなどを開催してます。

コロナもあり最近はあまり活動できてませんが、収束したら沖縄の経営者が話を聞きたい講師をお願いして大大的にやってもっと活性化したいですね。

ー協会に興味がある方にメッセージをお願いします。

沖縄から来てる経営者でも45~50歳まではつながることを拒否する方もいます。自力だけでやろうとしてね。10人のうち2~3人はそう。

だけど入ってつながると出身校とか親戚とか、話がつながってすぐ親しくなります。

まずは「face to face」で顔を合わせる事が大事だと思います。成功してる経営者に直に会ってみて触れること。

 

 

勉強も大事だけどそれ以上に成功者の所作、お金の使い方、話の言い回し、あったかさ、スケール感、それらを肌で感じて「こういう経営者になろう」というイメージを持ってほしいです。

もちろん良いところばかりとは限りません。時には反面教師にしていただいて。それらが人間的成長のエキスになるんですよね。

年配の人も若い人から学ぶことができるんです。若い人の目の輝きを見て自分も元気をもらえることもある。

人脈ってふつうは足し算だけど、経営者協会は掛け算ですよ。ものすごいスピードでビジネスも人間力も信用ある人の紹介で広がっていきます。

ただ「単なる懇親会じゃないよ」とも言っておきます。経営って厳しいんですよ。100の会社が生まれても1年で半分くらい消える。10年たつと3、4社しか残ってない。

とにかく生き残るんだよ、自分の会社を黒字にして。それを前提としてどんどんつながりましょう。利益を追求する集まりだから。

 

新垣進さん
新垣進さん
「飲んで騒いで楽しかった」で終わってはいけない。経営者だから。

 

いろんな業種の人がいて本音で言い合える人もいます。若い人からすれば余計なお世話に感じる時もあるかもしれないけれど(笑)。

あとマーケティングですね。人の意見も聞きながら自分の事業を多角的な目で見ることができます。

どうか経営者どうしで腹を割って色々話し、いろいろな世代の人がつながり、人間的な幅を広げる場所にしてほしいと思います。

 

 

沖縄は「ふるさと」と胸を張っていえる場所

 

ー最後に沖縄への思いをお聞かせください。

僕は沖縄に誇りを持ってますよね。ただの缶コーヒーも沖縄で買うと3000円くらいの美味しさに感じる(笑)。気分が高揚してるから。

沖縄に行くと僕は必ず田舎の畑を歩きます。風が体を吹き抜けていく爽やかな感覚を感じる。

当たり前のことが何でも楽しい。そのへんにシークワーサーが当たり前にあってすぐ食べさせてもらえたり。最高ですよね。

あと人柄が好きですよね。現地の人は大したこと無いというけど僕にすれば大変なこと。方言を聞くスタッフに会うとそれだけで「時給を上げて!」と言いたくなっちゃう(笑)。

 

新垣進さん
新垣進さん
生後3ヶ月で沖縄を離れたけど、僕にとって「ふるさとは沖縄」と胸を張って言える場所なんです。最高ですよ。

 

「観光と芸能とお酒と食事、4つ揃ってるのは沖縄だけだよ」そう言われたことがあります。

小さい頃はちょっと差別的な意味合いで「沖縄の人?」って言われてた。今は嬉しそうに「沖縄の人?」って言われる。NHKドラマ「ちゅらさん」あたりでね、急に見る目が変わってきた気がします。

僕らは川崎にいて北海道、東北、四国、大阪、九州の出身を見て県民性がわかるんだよね。

沖縄はかつて日本が鎖国してた時代に琉球は貿易してたでしょう。日本と中国に挟まれてうまく国を保ってきた。そのせいか沖縄には優秀な人が多いと感じます。

日本の文化もありながら、頭はカンプーで、衣装も中国風で首里城も中国文化でしょう。日本と中国の文化の良さを取り入れた頭の良い民族だなって思いますね。

僕は沖縄で育ってないんで、逆に沖縄愛が強くなっちゃう。昔は沖縄のことがよく知られてなくて差別されちゃってた。でも今は知られたうえで好きになってもらえてる。

沖縄を好きになってくれる人が増えてこんなに嬉しいことはありません。これからもその魅力を伝え、沖縄を応援し続けたいと思ってます。

 

新垣進さん
新垣進(しんがき・すすむ)

1954年、東風平町(現在の八重瀬町)生まれ。生後3ヶ月で神奈川県川崎市に移住。湘南工大付属高校を経て成城大学経済学部卒。母の食料品店を手伝い軌道に乗せた後、人材紹介業に参入。一度倒産を経験するも、主婦をメインにする新しい派遣会社、㈱オールビジネスリンクを立ち上げて主婦派遣業界第3位まで育て上げる。現在はシニアや外国人の人材紹介にも力を入れる。関東沖縄経営者協会9代目会長(加入者数約160社)。

【Facebook】新垣進

 

平良英之

新垣さん、お話ありがとうございました!

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