本日、2022年5月15日は沖縄の本土復帰50周年ということでこの節目についての私の個人的な思い、東京うちなんちゅ会のこれからの抱負などを記しておきます。
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「本土復帰50周年」とは何か
私にとっての「本土復帰50周年」を紐解くキーワードを2つ挙げたいと思います。「アイデンティティ」、そして「未来志向」です。
沖縄県民は「日本人」と「うちなんちゅ」2つのアイデンティが混ざっていると感じます。
個々で少しずつ違うと思いますが、例えば私の中には日本人50%、うちなんちゅ50%という感覚があります。ハーフみたいな感覚です。
日本人としての自覚、愛着、誇りがある一方、かつて私たちは琉球王国という独自の文化を持つひとつの国の人間であった、という思いが混ざっています。
そして歴史を振り返ってみると1945年から1972年までの27年間、沖縄はアメリカに占領統治されていました。
日本にとって沖縄は「外国」でした。ドルを使い、車は右側通行、 沖縄から日本に行くにはパスポートが必要だった。たった50年前のことです。
さらにその前には住民を巻き込んだ大規模な地上戦が展開された沖縄戦がありました。県民の4人に1人にあたる約20万人が亡くなったとされています。集団自決などの悲しい逸話も多く残されています。
そして経済格差や基地問題など、本土との軋轢は今なお存在します。
政治的なことでいえば、例えば沖縄県知事選は昔も今も「基地反対」か「経済」かの2択を選択させられます。つまり「平和」か「豊かな暮らし」か。
本来これは対立する概念ではないはずですが、なぜか1つだけを選ばされ、時には親族どうしでも争うもとになったりします。
基地問題は本土と沖縄の分断のみならず、沖縄の中でも分断をもたらしています。
歴史的に広い目で見ても日本、アメリカ、中国と、大国に挟まれた小さな島である沖縄は昔も今も常に翻弄され、揺れ動いています。
沖縄はそうした複雑な背景とアイデンティティを持つので「復帰50周年」と言われた時にも県内外からいろいろな意見が出てくる。
必ずしも沖縄県民が全員で両手を挙げて「復帰50周年」を喜んでるとは限らない。それもまた事実であると思います。
ただその一方、今回の「復帰50周年」を前向きに捉えていこうとする人々も多いと感じています。
解決すべき課題は色々あるけれども、まずは沖縄の、日本のひとつの節目として、自分たちが辿ってきた歴史や文化を見つめ直し、未来へ新しいスタートを切ろうじゃないか。そんな「未来志向」で捉えてる人も多いと感じます。
もともと、うちなんちゅは平和を好むし、誰と争いたいわけでもないと思います。みんなと仲良くしたい。
本土とはまだ埋まらない溝があるかもしれない。それならばまずはお互いの良さを理解し尊重しあって心の距離を縮めていこう。それが良い未来につながるはず。
「本土復帰50周年」はそうした「未来志向」でも捉えられているように感じます。
例えば東京沖縄県人会は千代田区の国立劇場で5月8日に「沖縄芸能フェスティバル」という大規模なイベントを行いました。
伝統芸能や沖縄ポップス、組踊などが網羅され、宮沢和史さんが島唄を歌うなど、沖縄ですらめったに見られないバラエティ豊かな大イベントでした。
また「結515」という団体もあります。これは復帰した年、1972年生まれの「復帰っ子」と呼ばれてきた世代、今年50歳となるうちなんちゅが中心となって結成された団体です。
結515は沖縄戦と戦後をテーマにしたドキュメンタリー映画の制作、子ども支援団体への基金設立、記念イベントなどを実施します。
代表理事にはガレッジセールの川田さんもいます。川田さんも「復帰っ子」です。
他にも復帰50周年の節目に合わせ、沖縄のみならず日本中でいろんなイベントが行われています。
これを機に色々な方から沖縄に注目いただき理解が深まれば嬉しいと考えています。
沖縄が代々受け継いできた価値観、精神とは
沖縄が代々受け継いできた文化、価値観は色々ありますが、やはり象徴的なもののひとつとして「平和の精神」を挙げたいと思います。
沖縄が受け継いできた歴史文化や価値観には、今の時代にこそ必要なものが多く含まれていると思います。
例えば琉球舞踊。これは「癒し」をテーマとする芸能です。賑やかなカチャーシーやエイサーなどとひと味違う、静かな音楽と踊りですが、そこには平和を保とうとする「内に秘めた静かで強い意思」が込められています。
荒れた世の中でも自分の心を乱されることなく、強い意思で心を落ち着けよう、世界を癒すことで平和を実現しようとしています。
また琉球舞踊は「おもてなし」の心で発展してきたので、例えば衣装ひとつ取っても見る方を喜ばせる工夫が隅々に施されています。どこの国から来た客人かで衣装や踊りの内容も変えていける柔軟さも持っているそうです。琉球舞踊は知れば知るほど奥深いです。
「琉球の綾音」という若手5人で東京で定期的に琉球古典芸能の公演を行っている団体があります。ぜひ見ていただきたいです。
あと先日、喜納昌吉さんが東京でイベントを行いましたが、喜納さんは昔からずっと「すべての武器を楽器に」と言い続けています。
これは人間の持つエネルギーを争いに使うのではなく祭りに向けることで平和を実現しようという、喜納さんらしさ、沖縄らしさの出た価値観です。
また現在、東京では「島口説(しまくどぅち)」という舞台演劇が上映されています。
これはアメリカ統治時代に沖縄が何を経験してきたかが、ひとりの民謡酒場の女店主から語られるというもので、沖縄では300回以上行われてきた演劇です。
この演劇の中ではなぜ悲しい思いをたくさん経験したのにうちなんちゅは笑いを絶やさず生きてきたか、その生きる知恵が伝わる内容となっています。
こちらもぜひご覧いただきたい公演です。
今の時代、ウクライナ情勢に代表されるように少しずつ世界の平和秩序が乱れ始めているような印象を受けます。
「沖縄が世界を救う」と言えばおこがましいし大げさですけど、そうした沖縄が受け継いできた平和の精神や知恵、伝統文化を今こそより広めることで、少しでも今の世の中の平和や安定に貢献できないか、私にはそんな思いがあります。
これからも東京で沖縄文化の素晴らしさを広め、うちなんちゅの活躍をお手伝いして「東京から沖縄を盛り上げる」を実現していきたいと思います。